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   みんなの算数講座    第90講座    算数の出世魚     倍数変化算

お星さまと虹区切りの良い90講座になんとかたどり着きました。年内(2013年)の到達をなんとなく目標にしていたのでホッとしています。あと10歩進むと…!?!?
いよいよですねー。リオデジャネイロ&ソチyearでがんばりまーす。


今回の前回89講座に続けて
倍数算のお話から入りますが、途中からブリとハマチみたいな出世魚の話になりますよ。え?出世魚を知らない? ガーン、き、きみは、わ、わかすぎる.....
出世魚というのは成長していく過程の中で名前が変わっていく魚のことです。
ぶりはまち 元はいなだの 出世魚 という有名な川柳もありますね。出世するのは縁起がよいことなので、おめでたい祝福の席では出世魚を好んで料理に出すという風習もあるんですよ。
出世魚については、分類の方法が地方によってだいぶ違ったりしていて、調べてみるのもおもしろいと思いますが、これ以上書いてるとなかなか横道から戻れなくなりそうなので、今回はこのヘンで切り上げて本題にいこうと思います。倍数算が出世魚のように出世しますからね。最後までがんばって読んでください。

ではまず
前回の続きで、倍数算の中から忘れないバージョン

竹下さんと佐野さんは7:2の割合でお金を持っていました。竹下さんが佐野さんに、お昼休みに出してもらったコーヒー代の600円を返したところ、竹下さんと佐野さんの所持金の比は3:1になりました。はじめの竹下さんと佐野さんの所持金をそれぞれ求めてください。
写真左…世界最小最強セッター竹下佳江さん/2013年7月引退
写真右…天才リベロ佐野優子さん/ヴォロレチューリッヒ(スイス)所属

長年ファンをさせてもらっている佐野さんの写真が今回も出せました!
竹下さんも好きなんですけど、佐野さんのプレーの方がボクは感動しちゃうんです。ポジションの違いかな... お二人が姿を消した最近の全日本。つまんなーーーい。

えーと
倍数算メモは次のようになりますね。
あ、この講座は前回の89講座からつながってますんで、89講座をまだお読みではない人は先に89講座を読んできてくださいね。

    竹下さん 佐野さん
はじめ  
7  2
あと   
3  1

問題の条件から、「はじめ」と「あと」の中間で、竹下さんが佐野さんにお金を払っていることがわかります。
このように、二人の間でお金がやり取りされた場合、二人の所持金の和(合計)は変化しません。
忘れないバージョンのポイントは、ほとんどコレに尽きると言ってもよいでしょう。

二人の所持金の和が変わっていないから、上の倍数算メモに「和」という項目を追加し、やり取り前後の比の数字の「和」を書き入れます。
こうですね。↓

    竹下さん 佐野さん 「和」
はじめ  
7  2   9
あと   
3  1   4

そしてこのメモの「和」の数字を9と4の最小公倍数36にそろえ、その倍率に応じて他の数字を等倍するようにします。次のメモが出来上がりますよ。

    竹下さん 佐野さん 「和」
はじめ  
28  8  36  …「和」が4倍だからすべて4倍
あと   
27  9  36  「和」が9倍だからすべて9倍

ここで二人の比の数字の増減
に注目すると、竹下さんが2827減っていて、佐野さんがその分(=98)増えているでしょう?
はいはい、そうそう、この
が竹下さんが佐野さんに返したコーヒー代の600円ということになります。比の増減がだったから楽な数値設定でしたね。

=600円
はじめの二人の所持金は竹下さんが
28、佐野さんが8だから、求める解答は
竹下さん→
600×2816800円
佐野さん→600×
84800円 です。

前回「差」をそろえる問題が「サソロエ」転じてさすらいバージョンでしたよね?
今回は「和」をそろえたので、やはり最初はワソロエ倍数算と呼んでいたんですが、生徒の誰かが授業中「これはすれない!」と感動して叫んだとき、「あーそれいいなー」 という安易な理由で忘れないバージョンと命名されました。1文字目の「わ」しか同じじゃないから苦しいネーミングなんですが、子供たちの適応性はいつも半端じゃなくて、ボクの授業では10年以上忘れないバージョンで通用しちゃってますね。みなさんも忘れそうもないでしょう???(笑)

では次に冒頭で予告した出世魚が関わるお話。
じつはこの倍数算には応用パターンがあり、それには
倍数変化算という正式な名前がつけられています。ちょっとややこしくなってきたから整理しましょう。次のような分類を頭に入れてもらえたらよいと思います。

倍数算 正式名 かたっぽ固定バージョン さんじゅつまん命名  片方が不変  第89講座参照
  さすらいバージョン さんじゅつまん命名  差が不変  第89講座参照
  忘れないバージョン さんじゅつまん命名  和が不変  この講座の内容
倍数変化算 正式名 倍数算の応用パターン
倍数算の出世魚
 不変なし  この講座の内容

倍数算とよーく似てるのですが、名前が出世魚している倍数変化算とは次のような問題です。
またまた竹下さんと佐野さんにご登場願いますよ。

竹下さんと佐野さんは6:5の割合でお金を持っていました。「DINIG OUT*」でのお食事会で、竹下さんは8000円、佐野さんは4000円使ったので、竹下さんと佐野さんの所持金の比は2:3になりました。はじめの竹下さんと佐野さんの所持金をそれぞれ求めてください。
*昨日のカウントダウン記事で紹介した新宿センタービルのレストラン。お店のサイトはこちら

この問題はね、いままでの問題にあったような〈変わってないもの〉がないんですよ。二人ともお金が減ってるから片方の固定はできないし、使った金額が違うから差も変わってしまう。やり取りではないから「お金の和が変わらない」も使えない。
この〈変わってないもの〉がないという点が、倍数算が出世魚した倍数変化算の特長です。

では解説しますね。倍数算メモについては、いままでとタテ、横の項目を逆にして次のように書くとよいでしょう。タテが人の名まえ、横が時系列ですね。

     はじめ   動き    あと
竹下さん  
  ー8000円 
佐野さん  
  ー4000円 

はじめあとの比がタテ読みになりますが、ボクは色を変えて表示しました。
実戦的には色は使えないと思うので、
はじめの比を○で囲んだ数字、あとの比を□で囲んだ数字にするとよいでしょう。

じつはここで2つの方針があります。
はじめの比そろえる
あとの比をそろえる

どちらを選んでも解けるのですが、ここでは
あとの比をそろえる方法で解説します。ボクが指導で愛用している倍数算メモの構成上、あとの比をそろえる方が理解がラクなんですね。熱心な方ははじめの比をそろえる方法も考えてみてください。

では上のメモの
あとの比をそろえます。
の最小公倍数はだから、竹下さんの内容はすべて3倍、佐野さんの内容はすべて2倍します。
     はじめ   動き    あと
竹下さん  
18 ー24000円 6 …あとの比が3倍だからすべて3倍
佐野さん  
10  ー8000円  6 …あとの比が2倍だからすべて2倍

あとの比でそろったから、18ー24000円と10ー8000円は等しい金額です。

18ー24000円=10ー8000円

第88講座で考えたように、このタイプの式は、比の数字と金額の数字でそれぞれ差を取ればよいから、
1810=24000円ー8000円
=16000円より、=16000÷8=2000円です。

求めるものは二人の初めの所持金だから、最初に作ったメモ図に戻って、
竹下さん=
=2000×6=12000円
佐野さん=
=2000×5=10000円 です。

注意 を求めたあとで使うのは最初に作ったメモ図です。あとの比をそろえた2つめのメモ図を使わないようにしてください。

***

2回にわたってお届けした3種類の倍数算と応用パターンの倍数変化算。楽しく理解していただけたでしょうか?

内容的にはとても楽しいと思うのですが、ボクの個人的な意見として、倍数算とか倍数変化算という名前はすごくセンスが悪いと思いますね。
確かに最小公倍数がちょこっと登場してくるけど、解法の主眼は〈比をそろえる〉という作業に置かれていますから、倍数と言われてもしっくりしないんですよ。実際生徒たちにアンケートしてみても、ホントわかりにくい名前という意見が多いですね。
…というわけでボクは3つの倍数算に別々のニックネームを用意し、倍数変化算はそのまま使っているものの、倍数算の出世魚というストーリーで生徒たちの理解が捗(はかど)るようにしています。
この講座を読んでくださったみなさんも、忘れたくたってなかなか忘れないんじゃないかな???
もしそうだったら一生懸命書いた甲斐(かい)がありましたー。
ややこしい受験算数の指導、これくらい工夫しなきゃプロの算数指導者とは言えません。算数ごころのない人が有頂天で独りよがりのつまらない算数を教えているのを聞くと悲しくなりますね。
算数は数学じゃないんだってば!

みんなの算数講座はこれからも楽しい内容でどんどん続けていこうと思います。
次回の講座は歯車の話を予定しています。どうぞ楽しみにお待ちください。


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