一題の算数の問題を通してお話ししたいと思います。ひとまず次の問題を考えてみてください。 問題 A君は1階から2階に向かう上りのエスカレーターに乗りました。A君はじっと乗っていられない人で、自分でもエスカレーターを上りました(階段を上るように)。すると2階に着くまでにA君が上った段数は18段でした。 いったん1階に戻ったA君。今度は2階から1階に降りてくる下りのエスカレーターで強引に2階を目指しました。つまり、エスカレーターの動きに逆行して上っていったのです。するとA君が2階に着くまでに上った段数は90段でした。さて、このエスカレーター、1階から2階まで全部で何段あるのでしょうか? 上りも下りも同じ段数であるものとします。 この問題がスラッと解けた人はかなり算数が優秀です。意味は理解できても、算数へのつなげ方を悩まれた方が多いのではないでしょうか。コラムにも書きましたが、こういう問題は1対1でていねいに教わらないと、なかなか理解が難しいのです。ボクはプロだから、きっと皆さんを理解させますけどね。え?本当かって?じゃあさっそくお読みになって確かめてみてください。 エスカレータと同じ向きを「順行」、逆向きを「逆行」と呼ぶことにします。 順行のときに上った段数が18段、逆行のときに上った段数が90段です。上ったのは同じA君だから速さは同じで、逆行は順行の90÷18=5倍の時間がかかっています。 順行も逆行も同じ距離(段数)だから、5倍の時間がかかったということは、速さが5分の1だった。すなわち、逆行の速さを1とすると順行の速さは5です。 ※距離が等しいとき、時間と速さは逆の比 ではなぜ順行と逆行で速さが違うかというと、順行のときは「A君の上る速さ」に「エスカレーター自体の速さ」が加わり、逆行のときは「A君の上る速さ」から「エスカレーター自体の速さ」が引かれるからです。 ※この考え方、算数では「流水算」と呼ばれています。流水算についてはみんなの算数講座第57講をご覧ください。 A君の速さ+エスカレーターの速さ=5 A君の速さ−エスカレーターの速さ=1だから、 ここは簡単な和差算を用いて、 A君の速さ=3 エスカレーターの速さ=2 と求めることができます。 さて、問題に戻って、A君は順行のとき18段上りました。この18段は3の速さのA君が自力で上った段数(距離)です。そのときA君の上る速さとは別に、エスカレーターが2の速さでA君を応援しています(エスカレーターがA君を速くしているということです)。3の速さで18段上ることができるから、2の速さでは18×2/3=12段上ることができます。この合計の18+12=30段(答え)がエスカレーターの段数です。 念のため逆行の方でも調べてみます。A君が逆行のときに上った段数は90段です。これは3の速さのA君が自力で上った段数です。そのとき同時にエスカレーターが2の速さで、A君が上ろうとするのをジャマし、下の方向へ押し返そうとする力を加えています。 3の速さで90段上るから、2の速さで押し返される段数は90×2/3=60段。90段上って60段押し返された。このように考えてみても、やはりエスカレーターの段数は90−60=30段です。 いかがでしたでしょうか? たったこの1問の解説の中に、いろいろな算数のエッセンスが詰まっていますね。速さの基礎知識に加え、流水算の知識も必要でした。和差算も使いましたよ。しかもふつう速さといえば単位はmやkmという長さの単位なのに、ここではエスカレーターの段数が距離として使われています。これはじっくりていねいに教わらないと、なかなかスッキリと理解できないのではないでしょうか...。 塾などの集団授業は、解説の途中でどこかがわからなくても、一人の生徒のために止めて待ってはくれません。そしてわからないままの授業が淡々と進められてしまう...。そんな消化不良が何度も重なっていくうちに、だんだんと算数が不得手な生徒になってしまうのです。算数が個人指導に向いているのは、生徒のわからないところで指導者が教官ブレーキを踏めるからなのです。しっかり教われば伸びていく子どもたちが、塾の授業で混乱を深め算数を苦手科目だと思ってしまう。とてもよくある話です。不安をお抱えの親ごさんがいらっしゃいましたら、ぜひ良質な個人指導として家庭教師をご検討ください。 |
東京の中学受験 算数家庭教師さんじゅつまん|
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