今回は年令算という文章題で、ボクが教え子の発想力にア然とした話を紹介したいと思います。もしかするとこの解法は算数の先生でも知らない人がいるかもしれない。ボクは言われるまでまったく気づきませんでした。
現在、両親の年令の和は72才、子供たち3人の年令の和は20才です。
両親の年令の和と子供たちの年令の和が2:1になるのは今から何年後ですか?
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算数業界では年令算と呼ばれています。シンプルな年令算では登場人物2名ですが、上の年令算は登場人物が多く、それが問題をやっかいにしています。最後の2:1になるという点もやっかいですね。※やっかい…面倒なこと
ちなみに問題の最後が2:1になるではなく等しくなるだったらだいぶ簡単です。
現在の年令差が72−20=52才
両親は2人だから1年で2才ずつ年令が増え、子供たちは3人だから1年で3才ずつ年令が増えます。すると1年で3−2=1才ずつ差が縮まるから、
(72−20)÷(3−2)=52÷1=52(年後) ←最後が等しくなるだったときの答え
本題に戻ります。実際は年令の和が2:1になるのはいつか?という問題です。
まずは塾なんかで教えるオーソドックスな解法から。
求める年数を@年後とすると、※○囲みは比を表します
(72才+A)と(20才+B) が2:1になります。
※両親は2人だからAを加え、子供たちは3人だからBを加えました
2:1の1にあたる(20才+B)を2倍すれば両者は等しくなるから、
(20才+B)×2=(72才+A) ⇒ (40才+E)=(72才+A)
比の数ではイコールの左側がC多い分、年令では右側が32才多いからC=32才です。
したがって@=32÷4=8年後 →答え
この解法はたくさんの塾で教えるでしょうし、参考書にものっています。普通ですね。
(40才+E)=(72才+A)から先の処理は、左の線分図からもC=32才がわかると思います。
さてここからがさんじゅつまんのビックリ!
以前私の生徒だったTクンが教えてくれた解法を紹介しましょう。
あ、初めに断っておきますが、Tクンの解法がオーソドックスな解法に比べて、解く時間が短縮できるとか、理解しやすいということはないと思います。それでもボクが講座まで用意して紹介したくなったのは、Tクンの着眼の鋭さに感心したからです。頭の柔らかい子供の正しい発想を、ぜひ読んでみてください。
Tクンはこう言いました。
「最後の2:1になるというところを、等しくなるに変えたらどうですか? 両親に関係する数を、すべて半分に調節すればできると思います」
そしてTクンは、問題を次のように直しました。
Tクン修正後の問題
現在、(両親→)親の年令の和は(72才→)36才、子供たち3人の年令の和は20才です。
親の年令の和と子供たちの年令の和が(2:1に→)等しくなるのは今から何年後ですか?
もとの問題
現在、両親の年令の和は72才、子供たち3人の年令の和は20才です。
両親の年令の和と子供たちの年令の和が2:1になるのは今から何年後ですか?
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修正箇所、わかりますね?
両親(2人)を親(1人)に変え、72才を36才に変え、2:1になるの2を1にして1:1、つまり等しくなるという条件に直したのです。
つまりTクンの発想はネ
もともとの年令を半分にして、増える年令も1人へらして半分にすれば、最終的な年令も半分で済むということなのです。
なるほどこうすれば、一番最初に紹介した簡単な年令算になっています。
現在の年令差が36−20=16才
親は1人だから1年で1才ずつ年令が増え、子供たちは3人だから1年で3才ずつ年が増えます。すると1年で3−1=2才ずつ差が縮まるから、
(36−20)÷(3−1)=16÷2=8年後 ←答え
じつはこのTクン解法。問題の数値によっては計算が整数で収まらず、分数が出てきてしまう場合もありますが、考え方の欠陥はまったくありません。すべてを半分にすることで、見事に問題を解決させてますね。
便利かも〜と感じた人は、いつかこの解法を試してみてくださいね。Tクンは小学生だったから特許(とっきょ)は取ってません。だから誰がマネして使っても盗作にはならないでしょう(笑)
以上、「さんじゅつまん 小学生に教わる」の巻でした。
今回の講座はこれで終わります。また新しい講座を書きますからね。楽しみに待っていてください。
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