今回解説するのは、ボクが勝手に山縮め(やまちぢめ)法という名まえをつけてしまった速さの問題の解き方です。どんなに長い山道でも1kmにしてしまう... そんな考え方をぜひお楽しみください。
では雑談ナシで問題の紹介から。
ある山のふもとから頂上までを往復します。
行き(上り)は時速2.4km、帰り(下り)は時速4kmで歩いたところ、往復に6時間40分かかりました。この山のふもとから頂上までは何kmありますか?
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さてこの問題、じつは有力な解法が1つありましてね。それは今回のテーマ「山縮め法」ではなく、比を使って解く解法です。たぶん100人の受験生が解くと、90人以上がこちらの解法で解きそうですから、まずは普通に比を使う解法で解説しましょう。
※解説文中の分数の表記は分子/分母です。帯分数の整数部分と分数部分は別カラーで表示します。
〈比を使う解法〉
同じ距離を進むとき、速さの比と所要時間の比が逆比になることを利用します。
行きと帰りの速さの比は 2.4:4=24:40=3:5だから、
行きと帰りの所要時間の比は5:3(逆比)になります。
合計の所要時間6時間40分を5:3に比例配分して、行きと帰りの所要時間を求めます。
※どちらかを求めれば答えが出せます。ここでは帰りの所要時間を求めます。
6時間40分=6と2/3(時間)
6と2/3(時間)÷(5+3)×3
=6と2/3(時間)×3/8=5/2(時間)→帰りの所要時間
※行きの所要時間なら6と2/3(時間)×5/8=25/6(時間)
ふもとから頂上までの距離は、時速4kmで5/2(時間)かかるから、
4×5/2=10kmです。 ←答え
比を習っていれば、すごく自然な考え方ですね。
いゃボクもこの解き方がキライなわけではないですけど、ぜひ算数アタマの幅(はば)を広げるという意味で、次に解説する山縮め法についてもマスターしてほしいと思います。この考え方を知っているだけで、算数段級は3ランクくらいアップしますよ。
〈山縮め法〉〜ボクがつけた名前だから、日本じゅうの参考書を集めてものってない名まえです〜
ふもとから頂上までの距離をムリヤリ1kmに縮めます。そして次の@Aの順に考えます。
@ ふもとから頂上まで1kmの山を往復したら何時間かかるか?
A 実際の往復時間が@で求めた時間の何倍になっているか?
これで答えが出ます。
つまりふもとから頂上までの距離を1kmと仮定してしまい、実際の往復所要時間が1kmと仮定したときの往復時間の何倍になっているか?
そのように考えて山の距離を求めようということです。
ではやってみます。
@ふもとから頂上までの距離を1kmとすると、往復の所要時間は、
(1÷2.4)+(1÷4)=5/12+1/4=2/3(時間) ※1÷2.4は10÷24と同じ
A実際の往復所要時間は 6と2/3(時間)だから、
6と2/3(時間)÷2/3(時間)=20/3÷2/3=10(倍)
山を縮めて1kmとしたときの往復に比べ、実際の往復には10倍の時間がかかっているから、ふもとから頂上までの距離は、仮定した1kmの10倍で10kmのはずです。
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どうでしたか?
解説を終えてしまうと「な〜んだ」と思われてしまうのは手品やなぞなぞと同じかもしれません。しかしボクの算数教師の経験から、この山縮めの発想ができる人はホントに少ない!
1kmを基準の距離に決め、その距離(1km)を往復する時間を何倍すれば実際の往復時間になっているのか? その倍率こそが実際の山の距離だろう...
とても算数らしくて柔(やわ)らかい発想方法なのですが、あまり受け入れてもらえないようです。比の解法で生徒が満足しちゃうから、教える先生も少ないのかなぁ???
でも、今日この講座を読んでくれたみなさんはもぅ大丈夫ですね。きっとボクが考えた山縮め法という変な名まえを目にしただけで、なかなか忘れない思い出になったのではないかと思います。もし覚えていてくれたら、他の問題で応用できることがあると思いますよ。
ボクは生徒たちにインパクト(印象深さ)を与える目的で、いろいろな問題や解法に名まえをつけています。塾や学校では通じなくても、みなさんの頭の中で通じればボクは大満足です。これからもどんどん楽しい名まえをつけていきますよ〜。
では今回はここまでにしようと思います。また次の講座でみなさんに算数の話ができることを楽しみにしています。
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