今回は問題の解説ではなく、ちょっとした知識の講座です。
自然数を2つのチームに分類するお話。片方は素数(そすう)チーム、もう片方は合成数(ごうせいすう)チームです。
素数は、1とその数自身以外に約数を持たない自然数のことで、素数でない自然数は合成数です。
素数の方は有名だと思いますが、合成数の方はあまり名前が知られていないかも知れません。反対の関係の言葉として、両方覚えておいてくださいね。
あっ、それから1は素数でも合成数でもありません。1は今回のお話のレフェリーみたいな数で、まったく中立の立場です。
だから正確に言えば、自然数は〈1〉か〈素数〉か〈合成数〉ということになりますね。
え? 0ですか?
0は整数には含(ふく)まれるけど、自然数には含まれないのね。今回の話は自然数の範囲で考えるから、0のことは気にしないでください。それから、0より小さいマイナスの整数も、算数では想定しないことになっています。
※整数と自然数の違い
整数…0と、0に1ずつ加えていくことで得られる数。算数では想定しないが0から1ずつ引いていくマイナスの整数もある。
自然数…整数のうち、0とマイナスの整数を除いた数。1以上の整数。数を数えるときに使う数という説明もできます。
つまり、算数では0を含めると整数、含めなければ自然数ということです。
さて今回のタイトルはエラトステネスのふるいです。
エラトステネスは紀元前の学者で、地球の大きさを測定するなど、第二のプラトンと呼ばれるほど優秀だった人ですが 参考文献wikipedia 彼は、自然数を素数と合成数に分けていく方法として〈エラトステネスのふるい〉を考案しました。
ふるい というのは左の写真のような道具のことで、穴の大きさによって、それより小さな物質を ふるい落とすためのものです。
なぜそんな名まえがついているのか、次の説明を読みながら考えてくださいね。
それではエラトステネスのふるいによって、100以下の自然数を素数と合成数に分けてみます。
100以下の自然数を順に書き並べた下の図を見ながらお読みください。
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100 |
手順A
素数ではない1を消す(■色) ※消した整数(素数ではない整数。合成数)はカラーで表示しています
手順B
素数の2を残し、素数ではない〈2以外の2の倍数〉をすべて消す(■色)
手順C
素数の3を残し、素数ではない〈3以外の3の倍数〉をすべて消す(■色)
手順D
素数の5を残し、素数ではない〈5以外の5の倍数〉をすべて消す(■色)
手順E
素数の7を残し、素数ではない〈7以外の7の倍数〉をすべて消す(■色)
100までの ふるい はここで分類作業終了です。すべての数が素数と合成数に分かれました。
もし、もっと広い自然数の範囲で ふるい を実行するなら
手順F
素数の11を残し、11以外の11の倍数をすべて消す
手順G
素数の13を残し、13以外の13の倍数をすべて消す
………というように続きます。
さて、この作業が ふるい と言われる理由はおわかりになったでしょうか?
素数2を残して2の倍数を消し、素数3を残して3の倍数を消し、
素数5を残して5の倍数を消し、…
こうした作業によって素数だけが ふるい の上に残され、素数ではない数(合成数)が ふるい の穴からふるい落とされていく…。そういうイメージですね。
上の図で白くなっているところが素数、色のついているところが1を除いて合成数です。
なかなか面白いでしょう?
さて、いまの100以下の範囲での ふるい では、7を残して7の倍数(49、77、91)を消したとき、分類作業が終了と書きました。なぜそこで終了になるか
理由はわかりますか?
7の次に小さい素数は11ですよね?
もちろん11は素数として残っていますが、それ以外の11の倍数は、22が2の倍数のときに消え、33が3の倍数のときに消え、………
というように、すでにすべてが消えているからです。
つまり、11×□という11の倍数で、□が11より小さいものは残っていません。もし□を11にすると 11×11=121 だから、それは表の範囲を超えています。
という理由で、7の倍数を消した時点で操作終了ということになるのです。
***
エラトステネスのふるい いかがでしたでしょうか?
じつは素数という数の世界には、まだまだ多くの謎が隠されていましてね。たとえば、ある大きな自然数(例えば573491273)が素数かどうかを簡単に調べる方法は、現在までの科学では発見されていません。
そうした方法(大きな数の素数判定)が果たして存在するのか、しないのか?それすらもわかっていません。もしみなさんがいつか発見したら、フィールズ賞受賞は間違いありませんよ。
※数学にはノーベル賞がありません。かわりにフィールズ賞が数学での最高栄誉です。
まぁ、算数ではあまり大きな数の素数判定は必要ないと思いますが、100まで(できれば200まで)の自然数が素数かどうかは、あまり時間をかけずに判断できると便利ですね。何回か
ふるい を実行すれば、素数かどうかを覚えてしまう人も多いと思います。
じゃあ今回の講座、これにておしまいです。
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